頭に響く音

この「頭に響く音」とは、速読をしている時に無意識に心の中(頭の中)に発生する、その時読んでいる部分の英語の音(声)のことを指しています。私は今までペーパーバックを読んでいるときに、いつもこの「頭の中の声」が気になっていました。これにより、速読のスピードが落ちているのではないかと思っていたからです。そんな中、偶然松澤さんのホームページ「英語・発音・語彙」と出会い、作者の松澤さんとのメールのやりとりを経てモヤモヤしていたものが晴れました。ここでは、そのやりとりを編集したものを紹介します。ホームぺージを見ていただければわかりますが、松澤さんはイギリス駐在暦のある技術者の方で、発音や語源に特に詳しい知識をお持ちです。

松澤さんのHPにある「英語を読むとき文字の認識とともに頭の中に音が連続して響く」という部分についてのですが、松本道弘氏の「速読の英語」に読んでいる単語を心の中で復唱してしまう「subvocalization」について書かれており、これは速読の妨げになると書かれていたと記憶しています。これと、「頭の中に音が響く」ことは同じなのですか? 私はペーパーバックを読むときに、読んでいる単語を頭の中で無意識に読んでしまうことがよくあるのですが上記の理由でそれは良くないことだと思ってしまい、なるべくそれが起きないようにしていたのですが、無意識に起きてしまうのでどうしようもなくイライラしてしまうこともしばしばでした。
松澤さん
subvocalという認知方法がよく分からないのですがそれについてはコメントしかねますが、速読をしている状態は、目から入ってくる情報を脳が理解している状態です。脳が理解するためには、神経細胞に電流がながれて、知識と目からの情報が照合され、状況が理解されます。私の場合この神経細胞に電流が流れると、それを一種の「音」として感じているようです。順調に速読している状態では、この「音」がよどみなく流れていきます。分からない単語にぶちあたると、この音がとだえます。または、スペルから音が響くけれど、脳のメモリーから何の反応も無いときがあります。すると、前後から判断して、意味を類推するルーチンに入ります。ちょうど、ラジオを聞いている状態に似ています。ただし、速読の場合にはアナウンサーのスピードの数倍は速く音がなっています。しゃべると言うことは、口の物理的な運動でスピードの限界がありますが、速読をしている時の頭の中のおとは、物理的な限界が無いので、いくらでも早くなります。ですから、「頭の中におとが響く、頭の中に電流が流れることはごく自然な現象だと思います。イライラすることではなく、むしろ着実にのばす能力だと思います。

わかりやすい例えですね。「速読の英語」のsubvocalizationについてのべられている部分を調べてみましたので以下に引用します。
速読の英語  松本道弘著 プレジデント社 P110
「◎無音声化のクセ
声にも出さず、唇を動かすこともしないが、頭の中で(in your mind)言葉をいうことを、速読の用語でsubvocalizationと呼ぶ。これで読むと、完全な黙読より66%程度遅くなるといわれている。 このメンタル・スピーチというクセがある間、200wpm台を突破することは困難であろう。なぜなら、大人のアメリカ人のスピーチの速度は、平均170〜200wpmぐらいだといわれているからだ。」
もう一度お聞きしますが、松澤さんのHPに書かれている「頭に音が響く」ことと、上記の「頭の中で言葉を言う」ことは、同じものだと思われますか?
松澤さん
私も家で調べた結果Subvocalizationの出典がわかりました。"SPEAD READING MADE EASY"というかなり前の本です。従来の読書の方法にSubvocalizationということばがたびたび出てきます。斜め読みに対して、1語、1語をていねいに見る方法を言っています。 "SPEAD READING MADE EASY"では、きちんとした姿勢で必ず指で文章を指示して読みなさいと言っています。指の動きを早くすると、目もそれについてくる。理解もついてくるというものです。Subvocalizationを人が声を出して読む速さと考えると、私の言う頭の中の音は人の声の速さの数倍が可能と思われるために、別物でしょう。

それでは、subvocalizationとは、1語ずつ目をストップさせながら頭の中で1語ずつぶつ切りにして繰り返す、といったようなものみたいですね。松澤さんの言う「音」との違いは明らかです。上記の「速読の英語」のsubvocalizationに書かれている説明を素直に読むならば、今回の私のようにそれらの2つが同じものと思ってしまう人もいると思います。
好奇心からおたずねしますが、松澤さんが速読をするときに頭に響く声は、自分の声ですか、それとも例えば松澤さんが理想とするネイティブの声ですか?
松澤さん
頭の中の声は誰の声か?という面白い質問ですが、ためしに読んでみると、この音は、自分の声でもないし、理想の誰かの声でもないようです。もっと、微妙な声になる前の小さな音の原型のようです。嶋田さんも日本語で試してみてください。文字を見たときになにが聞こえますか。漢字、ひらがな、カタカナ、数字それぞれ微妙に違いませんか。脳の理解の不思議な働きです。

ためしてみましたが確かにそのとおりです。不思議ですね。これからは、頭にガンガン響かせながら読んでいきたいと思います。ありがとうございました。


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